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ISD条項が帝国支配を助長する可能性

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TPP問題で一部話題になっているISD条項。いったいどんなものなのか気になったので調べてみました。

ウィキペディアによると...

 

 

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投資家対国家の紛争解決 (Investor State Dispute Settlement、ISDS) 条項(以下「ISDS条項」という。)とは、当該条項により保護される投資家[1]に対し、外国政府に協定に違反する行為があった場合の問題解決手段として[2]国際法上の自らの権利として外国政府を相手方とする紛争解決の手続を開始する権利を与えるために、国際取引に関する条約に置かれる条項である。ISD条項と略される場合もある。

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だそうです。これ今読んでけっこうぞっとしましたよ。

つまり、たとえばちょっと前にBSEの問題とかありましたが、それと同じような問題で日本がまたアメリカからの輸入を制限したとします。安全基準下回るからだめだよって。

そしたら牛肉を輸入して製品に使用しているマクドナルドがぷんすか怒っちゃって、「ちょっと、日本が安い牛肉輸入してくれないからコスト上がって利益ガタ落ちじゃないの!訴えてやる!」って言って訴えたら日本が賠償金払わなくちゃいけないよ、そういうことを認めますよっていう条項なんですね。実際に、カナダでも同じようなことがあったそうで、カナダ側が負けてますはい(でも実際は外国資本企業に対して限定的な規制の場合のみ賠償請求が認められるぽいのでこの例は少し違いますが)。

 

まあでもよく考えたら1980年代とか日本の自動車産業が世界を席巻してた時代もあるし、その時代アメリカで不買運動起きてたし、それを発端にした日本だけを対象にしたスーパー301条も過去にあったらしいですしね。ことバンクによると「88年当時、米国との輸出入が特に不均衡であった日本を主な適用対象として規定されたといわれている」だそうです。

 

先日紹介した、

を読んだ後だったので余計にこのISD条項にぞっとさせられました。

前の記事では深くは触れませんでしたが、この本では「帝国」と化した巨大企業の身勝手で残酷な振る舞いが生々しく描かれていました。

たとえば、アップルやナイキが中国の工場でいか危険で悪質な労働条件下で従業員を働かせていたかということも少し前に話題になりましたが、その工場の周りには自殺防止ネットが張り巡らされており、彼らは常に危険と隣合わせで労働に従事させられているのです。また、某資源メジャーがアフリカの産油国から資源の権益だけを抜き取り、その国家を結果的に荒廃させてしまう、といった厳然たる搾取の構造や仕組みといったものを「帝国」は作り出しているのです。

 

僕がぞっとしたのは、こういった、帝国の支配がこのISD条項によってさらに強まるだろうなあということ、そしておそらく逆に、その強い支配力のためにアメリカ政府にも強い影響力を持っている帝国は、自らの権益拡大のために、ISD条項をTPPで飲み込ませようとしているんだろうということが透けて見えてきます。

 

ISD条項は確かに競争の効率性には寄与するでしょうが、その配分の平等を奪うことになるでしょう。今回問題なのは、全体のパイを成長させる策がとられている一方で、それにより生まれる格差を補てんする部分というのが全く見えてこないことです。

TPPや自由貿易自体は賛成ですし、それにより全体のパイが増えることを望ますが、その埋め合わせが仮に行われないとするならば、これは非常に怖いことだと思います。

 

参考

ISD条項とは (アイエスディージョウコウとは) [単語記事] - ニコニコ大百科