論理と情緒と情熱と。

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東京ガスのESを解説から考える「社会貢献」の意味

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東京ガスといえばこんな記事がありました。

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国はエネルギー業界を改革し、電力やガス事業に自由に参入できるようにする方針で、東京ガスは新しいトップのもとで事業や組織体制を見直し、新しい経営環境に対応する。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014012302000140.html

記事にもあるようにインフラと言われるような企業が位置する業界にも市場原理持ち込まれるようになってきました。電機やエネルギーと言ったものは国民の生活や企業活動にクリティカルに影響するということで、国家が活動しやすいように保護してきたわけですが、原発事故やエネルギーコスト削減するために普通の他の企業と同じように競合と競争しなければならなくなってきます。そうなると、いままで(言い方は悪いですが)温室のような環境でビジネスをしていた企業も、マッチョな体質になって戦っていかなければならなくなります。
JTはそんな変身を遂げた好例だとは思いますが、そのような変化を遂げられるか、多くの企業が試されていると言えるでしょう。
したがってインフラ系の企業といえども、これから入ってくる新入社員に期待するのはそういった過酷な環境を戦える人材や企業を変革してくれるようなパワーのある人材ということになるでしょうね。
ゆっくり待ったり働きたいから、という姿勢でエントリーすると面食らうかもしれません。

さて、こういうエントリーシートでは設問の意図を把握して、いかにそれに沿った答えを書けるか、ということが大事。でも就活生の立場だとそういう意図ってあんまりわからなかったりするので、その辺を解説しますよ。

一般的なESの書き方はこちら
【学歴別】ES(エントリーシート)の考え方 - 論理と情緒と情熱と。
ESをわかりやすい構成で書くコツ「状況・複雑化・疑問・答え」(考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則) - 論理と情緒と情熱と。

東京ガス14卒ES

  • あなたの成功体験を具体的に書いてください。★ 300 文字以内
  • あなたの苦労体験とそれをどう乗り越えたのか具体的に書いてください。★ 300 文字以内

この2つの設問は、非常にすばらしい良問ですね。就活生のコアがわかるような、本質をついたものです。成功体験やネガティブな経験がその人のパーソナリティにどのように影響を与えるかについては過去にこんな記事を書いています。

  • このネガティブな経験が生じる前というのは、プラスないしゼロの状態にいるわけです。そこでこのたぐいの事象が起きると、マイナスの状態に位置させられるわけですから、直前までの自分の状態、ないし自分の理想像とマイナスの現在地にギャップが生じるわけです。でもそれは本来は望まないギャップであり、自分に取っては矛盾にしか映らない。この矛盾こそが大きなエネルギーを生むのです。強引に引き裂かれて生じたギャップには引き裂くだけのエネルギーがあり、またそれを修復しようとすると相応のエネルギーが必要になるのです。
  • 成功体験はその人の中に自信を打ち立てたりアイデンティティを創り出します。ポジティブな明朗な人格を形成する上では絶対に必要なものです。

(中略)
なにかそういう自分に自信が持てるもの、それが積み重なっていて自己をきちんと評価できていくようになるんでしょうね。
その成功体験の性質っていうのも大事で、例えばリーダー経験で成功してきた人は人の上に断ちたがるし、何しろ「人」そのものに対する自信がすごい。一方、学術的な部分で成果を出してきた人は自分の頭や知的なセンスに自信を持っているし、知的なものに興味を持っています。当然ですかね。
ただ、経験上、他人との関わりの中での成功を経験した人の方が人間的な成熟度合いが高いとは思います。「人間」と対峙する経験の方が「人間」的に成長させてくれるんでしょうね。
[自己分析のヒント]過去の経験がその人の人格形成に寄与する部分について - 論理と情緒と情熱と。

このように成功体験やネガティブな経験というのはその人の人格の根本的な部分に作用します。なのでそういった体験を探ることを通じて(特に面接では)就活生がどんな人かを見極めたいのです。

ただ、形式的には自己PRや「学生時代がんばったこと」と同様なので、以下の記事で用いているフレームワークを使って書くとよいでしょう。

面接やES全てにつながる本質的な自己PRの考え方前編:面接官の意図 - 論理と情緒と情熱と。
面接やES全てにつながる本質的な自己PRの考え方後編:ー効果的な自己PRの構造ー - 論理と情緒と情熱と。

また、この設問では、この就活生はどの程度のことを成功・苦労と感じるのかという人間としての幅も見られています。極端な例ですが、ここでの成功体験が大学時代のある科目の成績でSをとったこと、だったら小さいと感じてしまわざるをえません。その程度のがんばりしかしてこなかったんだな、と思われても仕方がありません。
なので、自分のエピソードをどうやってうまく見せるかと言うことについても注意すると良いでしょう。

  • あなたは東京ガスを舞台にしてどのように社会に貢献できると思いますか。具体的に書いてください。★ 300 文字以内

志望動機を超えた将来のビジョンを聞いてきています。志望動機の書き方についてはこちら。

面接ES全てにつながる本質的な志望動機の考え方 - 論理と情緒と情熱と。
志望理由で「成長したい」と言う就活生がいたら迷わず落とします - 論理と情緒と情熱と。

まず、社会に貢献という言葉から何を思い浮かべるでしょうか。以前書いた記事(志望理由で「成長したい」と言う就活生がいたら迷わず落とします - 論理と情緒と情熱と。)で述べたことと本質的には同じなのですが、「社会貢献」という言葉をむやみやたらに使うのは御法度です。「社会」に「貢献する」って言ったって、社会って何?貢献するってどういうこと??ってつっこみたくなります。これらは抽象的なビッグワードであって、具体的にどうしたいかが自分の中でわかっていれば使う必要がない言葉なのです。

社会貢献という言葉を使いそうになったら、「誰に」「どのような価値を与えたいか」というふうに自分に問いかけてみてください。日本の子供なのか、発展途上国一般の人なのか、超一流エンジニアなのか。それがわかっていないうちは「社会貢献」と言う言葉を使うのは非常に危険です。


東京ガスのESはシンプルながら本質をついている非常に良くできたものですね。このESを書くことによってまた一歩自分に対する理解が深まることと思います。