論理と情緒と情熱と。

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レイヤー化する世界はもうすぐそこに来ている

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佐々木俊尚さんの「レイヤー化する世界」を読みました。もうね、これはこれからキャリアを考える人にとっては必読。就活生は就活本もいいけどこういう本をもっと読むべきだと思う。ワークシフトとか。

結局、民主主義とか、もっといえば「国民国家」という概念自体、歴史的にみたらほんと一時的なもので、一過性のものでしかなくて、人間が所属するコミュニティの性質はずっと変わり続けている。そして今まさにその「国民国家」という制度が崩壊しつつあって、これからはレイヤー化する世界というシステムが世界を覆っていきますよ、っていうのがこの本の主題。

民主主義と国民国家はセットで初めて存在できる、きっても切り離せない概念なのですが、そもそもこの2つは矛盾しているものでした。民主主義は「全員が政治に参加でき、全員が等しく平等な権利を持っている」という理念です。決して何も排除してはおらず、人類皆平等ともいえる考えなのです。しかし一方で国民国家は「ウチとソト」を分けることで成り立っています。日本という国は「日本人」という「ウチ」と、「日本人以外=中国人、韓国人、etc」という「ソト」を切り分けているのです。日本国というのは日本国民が日本にアイデンティティを感じているということを前提にしているのです。なのでもともと自己矛盾を抱えている「国家」という存在は、これからは力は弱まっていくでしょう。

国民国家の力が弱まってくるということは、他の覇者が世界を覆いだすということでもあります。筆者は<場>を作る企業がその覇権を握ると言います。「ウチ」と「ソト」を分け隔てるものがなくなり、<場>を運営する側と運営される側という新たな支配関係が生まれるのです。
音楽もメディアもクルマ作りもSNSも政府もあらゆるものが<場>の支配に飲み込まれていくというのです。それは現代の企業でいえば、Google、Apple、Amazonなどの企業です。彼らが、プラットフォームともいえるような、その上で様々なものが運営されていく根っこの土台みたいなものを支え、その分野を支配しているのです。

これは以前書いた企業が帝国化する未来で、どう生き延びていくか - 論理と情緒と情熱と。のエントリーで紹介した「企業が『帝国化する』」でも述べられていたこととも合致します。

「帝国」とよばれるような世界的大企業(アップルやグーグル、穀物メジャーなど)はこのような仕組みを内包しており、かつ、今後は少数の「帝国」が支配する世界が来る。

この本では、<場>を担う企業が仕組みを作り、その仕組みを通じて帝国のように世界を支配していくと述べられています。

たとえばGoogle PlayやApp Storeはスマートフォンのアプリケーションを流通させる<場>を提供しています。現状、いずれかのプラットフォームを通さなければスマートフォンのアプリを広めることは難しいでしょう。アプリ開発者にとって、ユーザーと出会うための入り口になっているのです。つまり、開発者にとっては避けて通れない道であり同時になくてはならないものになっているのです。
ここは関所のようなものになっていて、GoogleやAppleはそこで通行料としてマージンをとっています。したがって莫大な利益をそこで挙げることができるのです。世界中にスマートフォンが普及していることを考えると、その収益が莫大なものになることは容易に想像がつきます。

これらの企業はそうした中でもうまく税制の網の目をくぐり抜けて国家に払うはずの税金を最小化しています。例えば、Facebookは売上の4割を法人税の低いアイルランドの子会社に移し、世界での売上は2011年で1000億程度あったはずですが、アイルランド子会社が支払った税金はわずか3億円。米国発の企業なはずなのに、米国という国民国家の税収への貢献度は低いのです。
こういった企業の動きがさらに国民国家の終焉を助長するのです。

こうやって国家が力を失っていくことで、日本と中国、アメリカとポーランドな、国家間の違いは小さくなっていきます。それは結局、同じスキルで同じ仕事をやっている労働者ならば、同一の賃金に収束していくことになるのです。
企業は人件費が低いところで生産しようとしますから、もう中国では高すぎて最近では東南アジアに工場を建ててきています。いずれ東南アジアの人件費も上がり、次はアフリカに向かうことになるでしょう。そうやって、今まで低賃金だった世界の人たちの賃金が上昇していきます。
逆に日本では、人件費が高いということで企業が海外に進出し、空洞化現象が起きているので、人件費が下がる一方です。
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【図解・経済】民間平均給与の推移:時事ドットコムより
こうして、現在賃金が高い国は下がり、低い国は上がっていきます。それが止まるのは、世界同一賃金が達成されたときです。層なったときは、中国人、インド人、ナイジェリア人、アメリカ人、皆平等な状態で働かなければならないのです。

このような時代がやってくるということはもう様々なところでいわれていますし、アメリカ政府が公式にそのような予測を発表しています。
もう、日本という視点から物事を考えるのは古いのかもしれません。確実にそのような世界が迫っています。
どのレイヤーでどういう組み合わせで、自分のアイデンティティをおいていくか、それを考えなければということでしょう。