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僕らは犬の道を通らなければならない『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』

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久々にロジカル本を読みました。著者は戦略コンサルティング・ファームやイェール大学でPh.D.を取った経験から、知的な問題解決するためにはどうやったら無駄なく効率よくそして意味のある解を出せるかといった方法論を述べています。

考えてみればコンサルも学問も扱う分野やサイクルが違うだけで、問題解決という面では非常に似た手法をとっています。対象となる課題や問題は何かを設定し、その問題の構造がどうなっているかを分析し、課題を解決するようなソリューションを生み出す。その意味において著者はまさに問題解決のスペシャリストと言えます。

 

 

よくある問題解決本と同じようなもので、類書を何冊か読んだことのある自分にとって特別目新しいというわけではありませんでしたが、非常にシンプルにまとまっており具体例も適宜はさまれて非常に読みやすく理解しやすい内容でした。

 

 著者曰く、「バリューのある仕事」とはイシュー度と解の質がともに高い仕事のことを指します。つまり、イシュー度とは課題や考えるべき対象を定義・設定することでありそれがうまくできること、そしてそれに対して効果が高く実行可能な解決策を提案できることが「バリューがある」というのです。普段私たちは特段注意しなければ解決策の質ばかりを気にしがちですが、ひょっとしたらその解こうとしている問題は本質的に重要でなかったり、それを解いてもたいしたインパクトをもたらさないかもしれない。そんな問題を解いていては仕事量が膨大になってしまい、いくら時間があっても足りない。だから、うまく課題を設定することが大事だと説くのです。

考えてみれば当たり前のことですが、この「バリューのある仕事」の定義は自分にとってなかなか新鮮でした。というより、こうやって課題設定と解の質をセットで考えるという視点や、それを可視化するということが自分の理解を助けてくれました。

 

こういった問題解決のプロセスというのは、就活のコンサル対策である程度なじみがあったので目新しさを感じなかったのかもしれません。実務には程遠いでしょうが、一連の対策をすることで、そういった思考法やマインドセットを認知することができたというのは、自分にとって就活をした最大の利点だったと思っています。実際、意思決定する際や何かワークに取り組む際には非常に有用でした。

 

対策で用いた本

 

 

 

また、 著者は犬の道を通ってはならないと言います。「知的生産」の取り組み方には二通りの方法があると言います。一つは解の質を高めていって解の質もイシュー度も高い最適解に到達する方法。もう一つはイシュー度を高めていってから解の質を高めていく方法。前者では、解くべきイシュー(課題)が定まっていないため、膨大な量のイシューを解かなければならなくなり膨大な仕事量を抱えることになります。著者はこれを「犬の道を通る」と表現し、このような道を通るのではなく、解くべきイシューから絞り込み生産性をあげる後者の方法をとれるようにならなければならないと言います。 

しかし最初から犬の道を通らないことなど可能なのでしょうか。確かに、このようなスマートなプロセスを踏むことができればそれに越したことはありませんが、誰でも最初はそのような問題解決方法に不慣れで、ビジネス的な勘も養われていません。イシューを設定するためにはまずその分野に何があるかを知らなければなりませんし、著者もそのためにまず一次情報に触れることを挙げています。コンサルタントだろうと新米ならばその一次情報に触れる時点で膨大な情報の波に飲まれ四苦八苦するはずです。そういったものは地道にがむしゃらに量をこなしていくことで段々と自分の解き方も洗練されていき、またその分野に対する肌感も身につくのではないでしょうか。誰でも最初からスマートにできるとは思えません。その点が腑に落ちませんでした。

 

 

蛇足ですが、どこで見たかは忘れてしまいましたが、あるコンサルタントの方が、その方の上司(マネージャークラス)であってもロジカルシンキング系の本は定期的に読むとのことでした。メンテナンスが必要なんですかね。こういう方法論っていうのは、基本の方みたいなものがあって、実践でその型を使ってばかりでメンテナンスを行うとその型がだんだんあいまいになってしまうんですね。

たとえば受験勉強でも、いくら受験生本人のレベルが上がって応用問題をバリバリ演習できるようになったとしても、基礎を定期的に復習しないと応用問題が解けなくなってしまうんですね。基礎的な方法論や知識というのが土台となって応用問題が解けるわけであって、応用問題はそれらの「扱い方」を訓練しているだけに過ぎないんですね。ロジカルシンキングでも同じだということでしょう。