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優秀な人がベンチャーに行くというのでなく、むしろ優秀な人じゃないとベンチャーでやっていけない

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<このブログの就活系記事をまとめた記事を書きました>

 

日本とは異なり、アメリカでは優秀な学生ほどベンチャーに行くというのを聞きます(ここでいうベンチャーの定義は急成長して将来有望だが組織的に未成熟な企業のことをさします)。ドリームインキュベータの堀さんもそのような趣旨のことを言っています。

 

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例えばハーバード大学のビジネススクールで最も優秀な学生は起業を選びます。その次に優秀な学生が大企業に就職することを選び、そして最後が役人になる。日本では全く逆ですね。優秀な人ほど、役所や大企業に入ろうとする。そこに入れない人が、ベンチャーに就職するわけです。もちろん最近は優秀な人でもベンチャーに就職するケースも出てきているそうですが、その数はまだまだ少数です。株式会社ドリームインキュベータ | 堀 紘一 | ニッポンの社長

 

この論にはおそらく暗黙の前提があります。そもそもハーバードビジネススクール(他の欧米ビジネススクールを含む)は新卒で入るようなところではありません。多くの人が職務経験(最も多いのはコンサルや投資銀行。参考)を経てからキャリアステップのためにマネジメントを学びに行くわけですから、職務経験のない日本の新卒学生と比較することは不適切です。そりゃコンサルやIBDを経てMBAとった人の中で優秀な人ほど起業するというのはある意味当然とも思える結果であります。

これらの人が起業したりベンチャーに行くのはそれだけの見返りがあり、リスクが低いからです。起業すればその会社の一番美味しい部分をもらえるわけですし、ベンチャーだってストックオプションでおいしい思いできるわけです。仮に食いっぱぐれても彼らほどのタイトル・能力があれば市場価値は非常に高く、転職先は容易に見つけられるでしょう。

 

このような背景を踏まえると、「優秀な(日本の新卒)学生はベンチャーに行くべき」という言説は、ベンチャーに学生を引き込みたい人間のポジショントークでしかないのでは、という疑念を持ってしまいます(そしてそういう部分はおそらくあるでしょう)。

 

むしろ、本当に優秀な学生でないとベンチャーでやっていけないのではないでしょうか。この前も、大手企業とベンチャー両方から内定をもらって悩んでいる友人の相談に乗ったのですが、僕はそのように考えています。新卒で結果を出したいと考えたときに、大企業とベンチャーを比較するなら、大企業の方が人材の質の平均が高いのに対し、ベンチャーの方が分散が高いと言えるでしょう。

ベンチャーは自分が望めばそれだけの裁量も提供されるし、タフな環境で自らの「成長」を促すことができるでしょう。しかしそれはベンチャーの環境が未整備で確立されたパスがないからこそであり、表裏一体なのです。設立からの日が浅く、人材育成のノウハウが蓄積されておらず、また、確立された仕事のやり方も整っていないため、自分の仕事の基準が有り、バリバリ仕事をとって形作っていける人にとっては素晴らしい場所となるでしょうが、そういった能力やマインドを持ち合わせていない人にとっては非常にストレスフルな環境になることが予想されます。

このような条件を勘案すると、新卒にとっては基本的にベンチャーというのは不適切だというふうに思えます。もちろん、これはあくまで一般論であり、学生時代に長期インターンなどで経験を積んで、自ら創り出せるマインドを持っている人は当てはまりません。しかし、基本的には新卒学生は真っ白な状態であって、ビジネスにおける価値基準を確立していません。そのような状態で、人材の質の平均が低く分散が高い環境に身を置かれたら、何が正しいか間違っているか判断できず、害となる情報やスキルを身につけてしまいかねないのです。

だから、何が正しいのか、どんな社員が優秀なのかを判断することができて、既に活発なビジネスマインドを持っているという意味での優秀な学生でないとベンチャーに行くべきではないと思うのです。

 

このようなことを書いておきながら、僕自身は新卒で(いわゆる)ベンチャーに就職します。なので、入って潰されないためにも、しっかりと準備をしていかなければという思いを強く持っているのです。